挨拶
出世した自分とはまったく関わりのない人間に、改めて挨拶したくなるときって、どんな時だろうか。相手との差が歴然と開いてみえる自分が幸せすぎて、そのことを、出世とは無縁な人間に自慢したくなるときだろうか。最近、そういったことがあった。唐突にこちらに近寄って来てその人は、世間話をひとしきりしたあとに、またどうぞよろしくお願いします、と言った。そのとき、出世する人というのはやっぱりちがうなあと思った。どうでもいい人にまで、ちゃんとここに自分がいると、その存在をアピールし続けるという努力を決して怠らない。空気のように職場に漂っているだけの人間には、とてもできない芸当だ。