運命学へ(65)
東アジアの思考基盤となっている二つの書物は、『論語』と『老子』である。『老子』のキーワードになっている「道」という言葉は、安富歩氏の解釈によれば、「ものごとを成り立たせる不可思議な力」を意味している。この力は、減ることもなければ溢れることもなく、万物の淵源から発しており、尖った心をやわらかくし、縺れた関係を解きほぐし、光を調和させ、汚れを清める働きがある。『老子』によれば、人がよく生きるためには、身体を通じてものごとを感じること、つまり感性を豊かにすることが肝要なのである。感性が豊かになると、この世界の根源である母なる神秘と父なる神秘を体感し、権力者の話にまどわされることなく、自らの内なる声に従って、自分自身の心を自分で統御して生き生きとした生を生きるようになる。「道を得て真理を聞こうとする者は、日々何かを捨てる。これを捨て、また捨て、そうして無為に至る。無為であれば、為しえないことなどない」