運命学へ(55)
いまよりずっと若いころ、本屋でどうしても気になって買った本がある。それは人相について解説した本だった。著者の顔写真が裏表紙に載せてあった。俳優さんのように整った顔立ちだった。わたしはその本の内容はもちろんのこと、それ以上に著者に興味を持った。その本には、高知のとある商店街の一角で人相占いをしていると記載があった。詳しい住所や連絡先も書かれており、わたしはその占い師に電話で人相占いの予約を入れ、高知まで高速バスにのって出かけて行った。いま考えても、この一連の行動にはあきれてしまう。普段は石橋をたたいても渡らないような性格なのだが、いったん何かに興味を持つと、そういった性格とは逆のもう一つの性格が顔を出す。そのときわたしの頭にあったのは、その人相見に会うことだけだった。なぜそのとき、その人相見に会わなければならないと思い込んだのだろう。