運命学へ(41)
一生のうちに何度、ずっと記憶に残る出会いを経験できるだろうか。振り返ってみると、それが同性であれ異性であれ、その人の表情や服装、かわした言葉までを瞬時に思い出せるような出会いはきわめて少ない。正確には二度目とか三度目にお会いしたときの印象を覚えていたりするが、その二度目や三度目がその人との本物の出会いだったのだ。自己外部に漂う微弱な見えない力--惑星の運行と関わっているーーと、現実の体験から湧き上がってくる自己内部の感情が複雑に絡み合い、いつまでも忘れられないひとつの像を記憶に刻みつける。初恋の人をいつまでも忘れられないという話はときどき聞くが、わたしにはそういった感傷的なところがない。初恋の人なんて、まったく思い出せない。第一、誰が初恋の人だったのかも判然としない。そのときの相手の表情、言葉、雰囲気などを、断片的にであれ鮮明に思い出すことができるというのは、じつはそれが人生の稀有な経験の一つであることの証拠であり、自分の運命式と関わるとてつもなく大変なことなのだ。