運命学へ(19)
家が泥棒に狙われたのは、後にも先にもそれきりだった。あとからいろいろな人に、のこのこと階下に降りていかなかったことが返って幸いしたと言われた。危害をくわえられる可能性があったと。命あっての物種とも。そんな風に考えたほうがいいのかもしれないが、家の後片づけと警察への対応にエネルギーを無駄に費やし、失ったお金は取り戻せなかった。これは、死ぬほどの目にあったといえるかもしれない。一歩間違えば、泥棒に殺害されていたかもしれないから。またさらにもう一つ、その期間仕事関係で、わたしはある組織の幹事役を引き受けることになった。これがもう、悪魔のような人物にゴマすりをしなければならないような役回りで、そのため誰も引き受けなかった役だった。わたしがしくじったら、組織全体の経済が立ち行かなくなるという重大な任務だった。だから絶対に、その悪魔のような人物の機嫌をそこねるような言動はとれなかった。また様々な書類を非の打ちどころのないものに仕上げて、その人物に提出しなければならなかった。そういった類の書類を今まで一度も作成したことがなかったし、その人物の前では、自分の奔放な性格とは対立する自分自身を演じなければならなかったので、心底疲労とストレスを感じた。