運命学へ(5)
この三十年間で何が一番変わったかというと、こと占いに関しては、やたらに占い教室が増えたことだ。占い師がいて客がいてという構図は古くなり、客が占い教室の生徒になる時代となった。つまり占い師として食べていくには、ハードルが高くなったということだ。わたしが鑑定を依頼した占い師も、例にはもれていなかった。もはや鑑定だけでは食べていけないのだろう。ただでさえ少ない客を生徒として取り込むので、小さな事務所では、個人指導とならざるを得ない。個人指導と聞くと、門外不出の事柄を教えてもらえそうに思うが、事実はまったくそんなことはない。そこは駅から徒歩一分くらいのところにあった。かなり古いテナントビルの三階フロアの一室だった。予約時間ちょうどにビルの外階段を上り、わたしは紺色に塗装されたアルミ製のドア横のインターホンを押した。