運命学へ(8)

ほかに何か聞きたいことは、と占い師が言った。この占い師は客へのサービス精神に欠けている。もっと表面的なことでもべらべらと喋ったらいいのにと思った。初対面の相手に、それもまったく意思疎通ができていない状況で、客からいったいどんな言葉が出てくるというのだろう。随分と高飛車な態度の占い師だが、懐疑的で意固地な客であるわたしにあわせて、そういった態度をとっているようにも思えた。なんとも嫌な目つきの客だったのだろう。三十年ぶりの運命鑑定だったが、くだらないことにお金をつかってしまったと後悔を感じ始めた。そのときふいに、この命式は母親とうまくいかない、と占い師が言った。思い当たる節があったので、少し母のことを聞いてみたくなった。そうすると、二件になりますと料金が倍になります、と占い師が言った。わたしは、かまいませんと答えた。これもおそらくは、占い師のテクニックの一つだったのだろう。親子関係こそが現代のテーマなのだから。

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