運命学へ(9)

母の誕生時刻は不明だったが、占い師はそんなことは気にしていないように見えた。四柱推命は生まれた時刻を重要視する。占いにくる客のなかには、自分の生まれた時刻を知らない人が結構な数でいる。占い師はそういった客のニーズにも応えなければならないから、あえて時刻を無視して占うこともあるのだろう。やはり五分ほど命式を出すのに時間がかかった。おもむろに顔をあげて、「線路のようなものと思いなさい。永遠に交わることはない」と言った。「なるべく会わないように。もうあなたの人生から消すように」と言葉を付け加えた。わたしは母が、よほどわたしの命式にとって悪い作用をしているのかしらと思いながら、何度も小さく頭を動かしてうなづいた。すると突然、占い師は自分の母親のことを語り始めた。客のことではなく、自分のことを話し始める占い師に奇異な感じを受けたが、わたしは黙って占い師の言葉に耳を傾けた。

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