自分を変える14

もうわたしに乗馬は必要なくなった。自分を変えるとは、自分の恐怖を克服することだ。思えば、自分の恐怖を克服するためのレッスンに乗馬を選び、そうとう無理をしたし、要らぬストレスもためた。不安をすこしでも和らげようと、本を買いこんで知識を詰めこんだ。挫折の連続だったが、それでも達成感のようなものを味わうことができた。心が解き放たれて大気に溶けこみ、肚の底から笑いが沸き起こってくる稀有な感覚だ。わたしの乗馬物語はここでおしまいとなるのだが、お金を使った分の収穫はあったと思いたい。知識を自分のものにするには時間がかかり、そのかかった時間は一瞬のうちに溶解する。すべてをつかんだと錯覚できる瞬間は必ずくる。そういった瞬間を導くのには、良き指導者、自分と相性のいい相手にめぐりあうことだ。相性がいいとは、相手と自然な笑みをかわせること。何も言わなくても、お互いに理解しあえていると思えること。そして何よりも、痛くないことだ。

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