運命学へ(1)
若いころ、自分の運命に興味をもった。そのころの私は他力本願だったので、誰かに自分の運命について語ってもらいたいと思った。占い師を求めて街を歩き回ったこともある。そのときはいつも、意志や努力とは関係のないところで人は運命に翻弄されるのか?という疑問に苛まされながら、占い師の言葉を聞いたものだった。運命的な出会いとか運命的な出来事とか、人生の特に大事なシーンをそうした言葉で飾って表現することが多い。運命という言葉は、未来を知ることへの渇望を露わにしている。占い師に告げられた未来に、その言葉を受け取る人間の欲望が絡み合って、個々人の勝手な幻が構築される。そうであるとするならば、占い師は人に、創造的な力を与える摩訶不思議な力を持った人間ということになる。もちろん個々人に勝手な幻を構築させることのできる場合に限ってだが。