自分を変える12

軽く馬の腹を蹴った。馬はゆっくりと歩き始めた。次は軽速歩をして下さいというインストラクターの指示に合わせて、馬の腹を再び軽く蹴った。スピードはけっして速くはなかったが、馬は走り出した。あれ、リズムが違う。合図を勘違いしたようだ。わたしは馬が駆け足をしていることを瞬時に理解した。インストラクターの言葉を思い出して、後ろポケットの下のほうが馬の背中に触れるよう、そのことだけに集中した。馬の前足が地面に着地するとき、わたしの体は宙に浮いた。だけどその後は正確に、馬の背中に腰が吸いついた。寸分のずれもない。自分の腰のぜい肉のせいだろうか。馬の背中に再び体がもどるとき、いままで感じたことのないやわらかいクッションの感触があった。痛みどころか真新しいバネの上で弾んでいるようだった。青空がわたしをめがけて飛び込んできた。このときの気分は、爽快の一言だった。

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