運命学へ(6)
どうぞ、と中から男性の声が聞こえた。わたしはドアノブに手をかけた。どんな人物が占いをしているのだろう。部屋の中にいたのは、がっしりした体躯の五十過ぎの男だった。この道二十年と言ったが、長くやっているからいい鑑定ができるとは限らない。前の職業は何だったのだろう。出会いがしらに客を威嚇するようなことを言うのは、一つの経営戦略なのかもしれない。わたしはその占い師にうさん臭さを感じた。座るようにと促され、真新しい事務椅子に腰かけて鑑定がはじまった。あらかじめ生年月日を電話で訊いてきたのに、四柱推命の命式は出されていなかった。占い師は万年暦を繰りながら、おもむろに白い紙に八文字を書いていった。自分の命式については、この三十年の間に何度も見てきたので、紙に書かれた文字が間違ったものではないことを一つ一つ確認した。