自分を変える9
そうそう、裏掘りのことを書いておかないといけない。馬の四本足のうちのひとつを手でつかみ、蹄を裏返して掌にのせ、そこにつまったゴミを取る作業だ。いつも馬の左側に立つようにと言われていたので、馬の左足を裏掘りするのはさほどの問題はないのだが、馬の右足を掘る場合は、馬の腹の下にもぐらなければ手がとどかなかった。とくに右後ろ脚には閉口した。馬の後ろ側に体を移動させることには、蹴られるかもしれないと恐怖を感じた。後ろ足の裏掘りが恐怖のためうまくできず、インストラクターに、小学生でもやれてるのにと言われたとき、やっぱり乗馬はあきらめようと思った。自分の恐怖に立ち向かうとは、聞こえはいいが、たいへんなストレスを自分に課すことになる。馬自体が好きでないと、こんなことはできない。また思うように足をあげてくれない馬もいる。馬も初心者を馬鹿にする。これも人間同様だ。