自分を変える7
しばらくは歩くだけのレッスンだったが、ある日、軽速歩の練習をしましょうとインストラクターに告げられた。軽速歩はその名のとおり、馬が歩くよりも早いスピードで走る。右前足と左後ろ足、左前足と右後ろ足が、それぞれ連動して地面に着地する二拍子の動き。騎手はこの二拍子の動きにあわせて、馬の背中とぶつからないように腰を浮かせて衝撃を逃がす。軽速歩は動きが速い。最初、馬の動きに心も体もついていけなかった。腰を浮かすタイミングがよくわからず、何度も馬の背中に腰をぶつけた。レッスンが終わったあとは、トイレで痛みとの格闘をしなければならなかった。これは経験した人にしかわからない。また、挫折感に苛まされはじめたが、乗馬をはじめるときクラブに安くない入会金を支払っており、乗馬用の練習着をそろえるのにかなりの出費をしたこともあり、自分の挫折感を振り払う努力をした。自分を変えることには、痛みがともなう。心の痛みは実体がなくわかりにくいが、体の痛みはわかりやすい。わかりやすいって良いことだ。わたしは変わりつつある。そう思い込むことにした。