自分を変える5
視界の変化に慣れるのにしばらくかかったが、そのうち、馬の腹を蹴るようにとインストラクターが指示する声が聞こえた。わたしは馬の腹をかかとで軽くつついてみた。ぴくりともしない。だけど、馬にもどかしさどころか安心を感じた。もっと強く、とインストラクターが叫んだ。仕方なしに、さらにかかとで馬の腹をつついた。何事もおきなかった。もっと。自分の下腹に力をこめて馬の腹を蹴った。これは動物虐待ではないか。そう思った。するとようやく馬は、ゆっくりと後ろ足をふんばり前足を動かし始めた。一歩ごとに自分の腰が左右にねじれてゆっくりとした動きで揺れた。経験したことのない複雑な揺れだった。かつてのモンローウォークのように、二本足歩行で揺れる腰の動きとはまるで違って、そこに斜め方向の動きが加わっていた。それは、いままで経験したことのない新鮮な律動だった。