自分を変える4
インストラクターが号令をかけた。馬の背中に短くたたまれた鐙を下におろした。趣味でやる乗馬は、馬に乗り降りする際に、一番事故が多いらしい。馬が急に動き出したりして、バランスを失って馬から落ちたりする。だから初心者の場合、馬場で輪になっている七人の生徒が、一人ずつインストラクターの見守る中で、鐙に左足をかけて馬にまたがる。わたしもインストラクターに見守られながら、左足を鐙にかけて、あがりにくい右足を馬の背中に回して、どうにかこうにか馬にまたがった。いつもの倍くらいの目の高さから一気に視界がひらけた。引馬のとき、馬のクビで視界の一部が遮られたのには不安を感じたが、一変した視界の開け方にも違った感覚の不安を感じた。自分はいま、馬の背中に乗っている。そのことを実感した。このまま動かないで止まっていてほしい。もうこれ以上の動きには、自分の心がついていけない。ここで再び乗馬に挫折した。